フォトグラファー
大塚 健一朗ブログ

大塚、カメラマンになる 6

2021.01

ネガフィルムを現像処理に出して1週間後、写真とネガが手元に戻ってきた。

写真を見た瞬間、手が震え、脂汗が出てきた。何回も見直し、現実に起きていることを受け入れるのに時間がかかった・・・

●60人親族集合写真が真っ暗で、人の顔が認識出来ず、手前の階段の手すりがほのかに写っている

●披露宴の写真、1/3が真っ暗で新郎新婦様の顔が認識できない

●ケーキ入刀など大事なシーンでのピント外し

なんでカメラはちゃんと撮ってくれてなかったんだ!!
集合写真が、いつもの部屋で撮れてたらこんなことになってなかったんだ!!
新郎新婦の動きが速すぎて、思うような写真が撮れなかったんだ!!

俺は悪くない・・・仕方ない・・・

自分と向き合うことがなく、環境と人のせいにしていた私には成長がなかった。

結果、

●60人参列者すべてのご自宅への集合写真の謝罪に2か月かかった

●暗い写真を極限まで明るく編集、参列者の撮影した写真を頂きアルバムを制作

私たちの結婚式を返してください!!とお二人より涙のお言葉を頂き、自分がしている事の重大さに改めて気付き、深く心から謝罪し、仕事への取組む姿勢を見直した。

知人に頼み撮影練習を行い、アシスタントしながら撮影勉強を行い、足りなかった部分を補うように写真撮影の勉強を行った。

しかし、物事は思うようにいかず、立て続けにクレームを出してしまった。

依頼された撮影ポイントを逃してしまうことや、大切な写真のピント外しなど3件連続の大クレームを起こした。

3件目のアルバム納品前、ピント外し・撮影不備など、これはクレームになるとわかっていた。これを納品したら、カメラマンをやめよう。俺には向いてない。一生懸命練習しても出来なんだから・・・。アルバム納品は予想通り、クレームになった。

新居のアパート玄関での納品『こんなアルバムいらない!!』と新婦さんが投げつけ、頭にあたり血が出た。雨が降る中、土下座して謝るも、返ってこない時間に深く傷つき、その場に居てもたってもいられない状態。奥から新婦さんのお母さんが出てこられ、アルバムを見た後、私の目を見て驚きの言葉を頂いた。

『大塚さん、カメラマンを辞めないでね。私は嬉しかったの。披露宴の時、一生懸命走って、汗かいて、我が娘のために撮影していた姿が本当に嬉しかった。あなたは必ず素晴らしいカメラマンになると私は思うから。絶対、カメラマン辞めないで。必死に頑張って。あなたなら出来る。』

なぜか自然に涙が溢れてきた。泣くという感覚ではなく、息をするように涙が溢れ出てきた。その瞬間、心のスイッチが『パチッ!!』と切り替わった音が聞こえた。

 

カメラで写真を撮る事じゃない。目の前の人に『写真を通して何が出来るか』これを究極に探して届けよう!!その時の私は撮影技術の習得に囚われ、ガチガチになっていた。

カメラという機械で写真を捉えることより、自分の心で目の前の人の心を捉え、写真というカタチでお渡ししよう!!そのための撮影技術習得だ!!

次の日から、初心に返り、すべての事に取り組んだ。

たくさんの壁にぶつかりながら、たくさんの方々に迷惑もかけた、たくさんの方々に助けて頂き、たくさんの幸せの現場でシャッターを押させて頂いている。

 

今でも、お母さんの言葉を思い出す。

 

『諦めなければ、必ずできる』

 

こうして、大塚カメラマンは、写心家として、今も見えないものを写真に撮り続けています。

 

大塚カメラマンになる、完結です。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

引き続きGiveseedをよろしくお願いいたします。